
開業したら青色申告がいいと聞いたけど
そもそも確定申告ってよくわからないな…
絶対やらなきゃダメなの?
フリーランス=青色申告 のイメージがありますが
確定申告は「青色申告」だけではなく、「白色申告」もあります。
収入金額、経費額によってどの確定申告の方法が自分に合っているのか
判断することが大切です。
目次
確定申告は絶対に必要?

フリーランスは確定申告を絶対しなくてはならないのでしょうか?
答えはNO!です。
確定申告とは、所得税を自分で計算して国に申告することですが
ある一定の金額より所得が少ない人は、非課税となるため確定申告が不要になるからです。
簡単に言うと、事業を始めたばかりで
- まだ売上が少ししか見込めない
- アルバイト程度の収入があればいい
などの場合は確定申告自体が不要になる可能性があるのです。
確定申告のボーダーラインは「合計所得38万円」

では、いくら以上の所得があれば確定申告が必要なのでしょうか?
確定申告は、1年間の合計所得金額の38万円(基礎控除額)を超える場合にする必要があります。
(*令和2年度から基礎控除が48万円に変わります)
ここでいう「所得」とは、収入から経費を引いた残りを指します。
所得=売上や収入のイメージがありますが、売上金額そのものではありませんので、注意が必要です。
- 所得=収入ー経費
- 1年分の収入−経費> 38万円の場合は、確定申告が必要
確定申告の種類は、3種類ある

所得が38万を超える可能性がある場合、確定申告の種類も事前に決めておかないといけません。
確定申告の種類によって、帳簿のつけ方が違うからです。

確定申告の種類は、3種類あります。
- 白色申告 ・・・ 帳簿処理が簡単
- 青色申告(10万控除) ・・・ 帳簿処理が簡単 確定申告の書類が多い
- 青色申告(65万控除)・・・ 帳簿処理が複雑 確定申告の書類が多い
帳簿のつけ方によって、3つの方法から選ぶことができます。
それぞれの特徴を理解した上で、自分にあった確定申告を選ぶことが必要です。
白色申告の特徴とは?
白色申告は、個人事業主がよく使う確定申告の方法です。
特徴としては
帳簿の記入は単式簿記という現金の出入りのみ記入する簿記を使います。
経費のつけ方も、相手先ごとに細かく記入する必要はなく1日の合計額を記入すれば良いので負担が少ないです。
以前は、所得300万円以下は帳簿を記入する必要がなかったため、「白色申告=楽である」というイメージがありますが、現在は帳簿記帳は義務化されているため、青色申告との差は少なくなったというのが現状です。
また、節税という部分ではメリットはありません。
開業したばかりで帳簿の付け方が不慣れという方は、白色申告で慣れてからいずれ青色申告へ変えるという方向でもいいと思います。
やり方は、別記事フリーランス美容師の確定申告(白色申告)で解説しています。

青色申告の特徴とは?
青色申告は白色申告に比べ、受けるためにいくつか条件があり、帳簿処理も複雑になります。
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【青色申告の条件】
- 収入の種類は、事業所得・山林所得・不動産所得のみ
- 日々の取引を複式簿記で管理する
- 確定申告では、貸借対照表・損益計算書を添付する
- 青色申告承諾申請書と事前に提出している
訪問理美容の場合は、事業所得となりますので1つ目の条件はクリアすることになります。
青色申告承諾申請書も、必要事項を記入し税務署へ提出するだけなので難しいものではありません。
問題は、帳簿の管理です。
10万円控除の場合は単式簿記で良いのですが、65万円控除の場合は複式簿記を使わなくてはなりません。
また、確定申告で提出する書類も白色申告に比べ、複雑で多くなります。
経理経験があれば別ですが、基本税理士と契約、もしくは会計ソフトの導入が必要です。
青色申告のメリット|節税になる!

帳簿処理は難しそうだから、少しでも簡単な白色申告でいいやと思ったあなた!
ちょっと待ってください。
青色申告には、面倒な帳簿処理があると分かっていても選ぶべきメリットがあるのです。
その最大のメリットは、ズバリ節税です。
色申告をすることで、税金(所得税・住民税)が安くなります!
では、なぜ節税になるのでしょう?
所得税は、所得×税率で計算されます。
さらに所得が多ければ多いほど、税率は上がっていきます(累進課税)ので、所得を減らすことが節税になります。
節税するためには、2点を対策することが必要です。
一つ目は経費を増やすこと。
もう一つは控除を増やすことです。
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【節税の考え方】
- 所得税=所得×税率
- 所得が高いほど、税率が上がる
- 経費を増やす
- 控除を増やす
【節税対策】
経費を増やすことで、所得を減らすことができますので税金を減らすことができます。
でも、ただ増やせばいいということではありません。
経費にできるものを適切に計上することが必要です。
例えば
- 自宅と兼用している水道光熱費や、家賃などを正しい割合で経費に落とす
- 買い物したレシートをまめに記帳して取りこぼさない
- 家族従業員の給料を経費にする
- 貸倒引当金をもうける
- 赤字を3年繰り越す
青色申告の場合、③〜⑤を使うことができます。
特に、家族従業員の給料については、白色申告は金額に制限があるのに対し、青色申告は制限がありません。
ただ、事前に税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」に対価として適正な給料額を申請しておかなくてはなりませんので、経費を増やすために見合わない金額を計上することはできません。
④と⑤については、今期に現金の支出がなくても経費にすることができます。
控除=所得から差し引くことができるものです。
全員必ず使えるのが基礎控除38万円です。
その他、社会保険料控除は健康保険や年金など、払った社会保険料の1年分を全額控除されますし
扶養控除は、扶養している16歳以上の家族(親族)がいる場合、一人当たり38万〜63万円の控除を受けることができます。
先ほど所得税は、 所得 × 税率 で計算されるとお伝えしましたが、厳密にはさらに控除を差し引いた「課税所得」に対して計算されます。
- 所得税 = 課税所得 × 税率
- 課税所得 = 収入 − 経費 − 控除
よって、控除額が多いほど、所得は少なくなりますので節税になります。
中でも控除額が多いのが青色申告特別控除で、65万円の控除を受けることができます。
世間一般的に青色申告をした方がいいというのは、この65万円の控除を受けることができるからなのです。
【控除の種類】 1 雑損控除(災害・盗難・横領で生活上の資産に損失があった人) 2 医療費控除 (1年間の医療費−10万年 or 所得金額の5%) 3 社会保険料控除(1年間の健康保険料・年金などの全額) 4 小規模企業共済等掛金控除(掛け金全額) 5 生命保険料控除(一定の金額) 6 地震保険料控除(5万円を限度に全額) 7 寄附金控除(寄附金−2000円 ふるさと納税) 8 障害者控除(自分や家族が障害者の場合) 9 寡婦控除・寡夫控除(配偶者と離婚や死別して、扶養する親族・子供がいる人) 10 勤労学生控除(中学・高校・大学・専門学校に通う勤労学生で年間給料130万以下の人) 11 配偶者控除(パート収入など103万以下の配偶者がいる人) 12 配偶者特別控除(収入201万以下の配偶者がいる人) 13 扶養控除(扶養している16歳以上の家族・親族がいる人) 14 基礎控除(38万円)
参照:国税庁
65万控除を使った方が得?|判断する方法

控除には種類があり、控除を使うことで節税になることはわかりましたね。
ではあなたの場合、65万控除を使った方がいいのか?10万円控除で十分なのか?
具体的な判断方法を解説していきたいと思います。
売上430万で家族がいる場合

開業して初めての確定申告。
青色申告をする・しないで、どれだけ差が出るのかな?
【美容師 アキラさん(45歳)の場合】 職 業 :訪問理美容 経営(開業1年目) 年 収 :訪問理美容の売上380万 知人のつてで訪問理美容手伝い 50万(源泉徴収なし) 家族構成 :妻(40歳) パートで年収150万円 子 高校生(18歳) 経 費 :訪問売上の10%とする 社会保険料:国民年金 20万円 + 36万円 ※社会保険料は計算しやすいよう端数処理しています ※その他の控除に関わる条件はないものとする
アキラさんの場合は
収入は、訪問売上の380万円 + 手伝い分50万円 =430万円 になります。
経費は、380万 × 10% = 38万円 になります。
上記の条件から該当する控除は、
基礎控除・配偶者特別控除・扶養控除・社会保険料控除となり
控除の合計は、170万円と計算できます。
これを計算式に当てはめると、課税所得は222万円、所得税は22万円と出ます。
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【白色申告で節税対策をしない場合】
- 課税所得: 収入430万円 − 経費38万円 − 控除170万円 = 222万円
- 所得税 = 課税所得222万円 × 税率10% = 22万円
もし、アキラさんが青色申告を行った場合はどうでしょう
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【青色申告で65万控除を選択した場合】
- 課税所得: 収入430万円 − 経費38万円 − 控除235万円 = 157万円
- 所得税 = 課税所得157万円 × 税率5% = 5.4万円
課税所得が222万円→157万円となったことにより、所得税率も10%→5%となり結果的に16.6万円の節税となりました。
16万円あれば、会計ソフトも導入できますよね。
売上100万で夫の扶養に入っている場合

子育ての合間に訪問理美容をして年間の売上は100万円です。
こんな私でも節税できますか?
【美容師 アケミさん(37歳)の場合】 職 業 :訪問理美容 経営(開業3年目) 年 収 :訪問理美容の売上100万 家族構成 :夫(40歳)年収500万、子(5歳) 経 費 :訪問売上の10%とする 社会保険料:夫の扶養内のため負担なし
アケミさんのように、少ない時間をやりくりして訪問理美容をしている方も多いのではないでしょうか。
では、同じように計算してみましょう。
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【白色申告で節税対策をしない場合】
- 課税所得: 収入100万円 − 経費10万円 − 控除38万円 = 52万円
- 所得税 = 課税所得52万円 × 税率5% = 2.6万円
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【青色申告で10万控除を選択した場合】
- 課税所得: 収入100万円 − 経費10万円 − 控除48万円 = 42万円
- 所得税 = 課税所得42万円 × 税率5% = 2.1万円
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【青色申告で65万控除を選択した場合】
- 課税所得: 収入100万円 − 経費10万円 − 控除103万円 = 0円
- 所得税 = 課税所得0円 × 税率5% = 0万円
アケミさんの場合、青色申告65万円控除を使えば2.1万円を使えば税金は0となりますが、10万円控除・白色申告では2〜3万円となり、あまり差がありません。
また、青色申告65万円控除も、大きく節税できているとは言えない金額です。
会計ソフトの経費で、ほぼなくなる計算ですよね。
青色申告するか判断しよう|投資コストと比べる

帳簿管理に少し投資しても、それより多くのリターン(節税額)があるなら青色申告を選択するべきだと思います。
逆に節税額が少なく、会計ソフトを入れる費用や手間をペイできないのであれば青色申告10万控除や、白色申告を選ぶべきだと思います。
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【青色申告するか判断する方法】
- 収入見込み額から所得税額を予想してみる
- 65万控除を採用すれば節税額が大きい → 青色申告65万(会計ソフト必須)
- どの方法でも税額が少ない → 青色申告10万か白色申告
- 節税額が少なくても会計ソフトに投資できる → 青色申告10万
- あまり節税にならないから、自力で帳簿管理したい → 白色申告
このように、自分の収入の見込み額と控除額を計算した上で、帳簿管理の手間(会計ソフトや税理士費用)をかけてでも青色申告を採用するかの判断が必要です。
私がオススメする選択方法は、
- 売上の金額が大きい・・・青色申告65万控除
- 専従者として働ける人がいる・・・青色申告65万控除
- 事業を始めたばかり・・・青色申告10万円控除で少し節税 または 白色申告
- 単身者のため控除が少ない ・・・ 青色申告10万円控除で少し節税
がいいかなと思います。
いずれにしても、経理の経験がない人には最低限会計ソフトの導入をお勧めします。
簿記の習得や帳簿管理に時間を割くより、営業先の確保や技術向上に時間を割くべきだと思うからです。
数字に関しては細かい部分をみるのではなく、全体像を把握することが大切です。
帳簿管理=細かい部分は、会計ソフトに任せましょう。
ちなみに税理士さんも、会計ソフトを使って仕事してますよ(^^)
